倫敦市の人々
(泳げないくせに助けに来たのか…)

馬鹿な奴だ。

そう思う反面、その忠犬ぶりに胸が熱くなる。

何者か素性すら知れないジャックを、命を投げ打ってまで助けようとする。

犬にしておくには勿体無いほどの忠誠心だ。

それ故に、無駄死にさせるには惜しい。

力の入らなくなった手を無理に動かし、ジャックはロンを押し退けようとする。

泳げないまでも、自分だけ浮上するならばロンにでも出来よう。

このままでは共倒れだ。

(お前だけでも生き残れ…)

何とか引き離そうとするジャック。

< 104 / 380 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop