倫敦市の人々
だが胸の傷から出血し、水温によって意識も失いかけている今、幾らも抵抗は出来ない。

やがてジャックは完全に気を失う。

苦痛はない。

体が浮かび上がっていくような心地の良い感覚。

水中にあって、呼吸の苦しさは感じなかった。

寧ろ息苦しさから解放されたような。

どこかに寝かされ、柔らかく暖かいもので身を包まれ。

死とは意外に安らげるものなのだなと思う。

確かラミアは、ジャックが二度死んだと言っていた。

ならばこれが三度目の死か。

今度も生き返るのだろうか。

それとも今度こそ本当の死か。

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