倫敦市の人々
「……っっ」

目が合った途端、黒いローブのフードを深々と被り直す女性。

面が割れるとまずい事情でもあるのだろうか。

それは悪い事をした。

ジャックはしっかりと顔を見てしまった。

「……」

顔を背け、彼女は何度もフードを被り直す。

言葉はない。

こういった場合、救助した相手に大丈夫か、とか訊くのが普通だと思うのだが。

ジャックが横顔を見ると、女性はその視線から逃れたがるように更に顔を背ける。

ヂャラ…と。

女性の首にかけられた大きな金のロザリオが揺れた。

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