倫敦市の人々
その時だった。

「坊や達は下がってなさい」

ユヤ達の背後から、よく通る声が聞こえる。

振り向くと、そこにはラミアが立っていた。

先日出会った時と同じ、焼け焦げ、煤け、薄汚れた着衣。

しかし今夜はそれに加え、どうした事だろう、血痕まで付着していた。

「ラ、ラミアさん、それっ…」

「大時鐘時計台で何かあったのかしら、ジャック?」

狼狽する椎奈の声に耳を貸さず、ラミアは薄く笑う。

「それとも、別の誰かに何か聞かされた?…迷いなく私に襲い掛かってくるなんて…まるであの頃に立ち戻ったみたいじゃないの」

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