倫敦市の人々
大時鐘時計台の鐘は、正午の時を告げる。

振り子は風の影響を受けないよう時計部屋の真下にあり、振り子自体は長さ3.9メートル、重さ300キロ、2秒ごとに時を刻む。

構造全体では重さ5トンになる。

倫敦市民に時を知らせ続ける象徴とも言うべき大時鐘時計台。

その振り子の真上、時計部屋に彼はいた。

左目にモノクル、フロックコートを身に纏い、杖を携行する時代錯誤な紳士。

20代後半と若々しい外見に似合わず、彼は時計台と共にこの街の半生をここで見つめ続けていた。

そしてその時の中で、『最愛』を見出したのだという。

アイヴィー・クレメント。

金と銀、二つの懐中時計を持つ吸血鬼…。

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