倫敦市の人々
こうしていても分かる。

風に乗ってくる、心ざわめかせるような『最愛』の香り。

締め付けられるような感情に、アイヴィーは昂る。

吸血鬼の身でありながら、日の光の中を彼女に逢いに行きたくなるような、そんな感情。

しかしその『最愛』の香りに混じって。

「…興を削ぐ…」

アイヴィーはふと冷淡な表情を浮かべた。

「『獣』の臭いがするな…」

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