倫敦市の人々
曾祖父は嵐の夜の建物の倒壊で右腕を柱に挟まれた。

従兄弟は交通事故で左腕を車両に轢かれた。

叔父は山中で毒蛇に左手を咬まれて治療が遅れ、壊死してしまった。

いずれも不幸な事故。

しかし一族の中で、こう何度も腕ばかりを失う者が出るとなると、不幸な事故では片付けられない。

茨木の一族は、それが何かの呪いであると信じて疑わない。

「…る…」

そして、その一族である美弦もそうだった。

「…つる…」

いつ何時、己の腕にもその呪いが降りかかってくるのか。

「美弦っ!」

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