倫敦市の人々
霧がどんどん濃くなっていく。

まだこの近辺の地理には明るくないのに、霧まで出たら道がよく分からない。

こんな時にどうして霧なんか…!

とにかく走る美弦の頭上を。

「!!!!」

羽ばたく音が通過する。

ビジョンで視た、片目の潰れた鴉だろうか。

恐怖に思わず振り返った美弦に。

「うわあっ!」

大型犬が飛び掛かってきた!

押し倒される美弦。

当然噛み付いてくる。

そう思って犬を押し退けようとした美弦は。

「~~~~っ!」

その頭部の欠損した犬の姿に、言葉にならない悲鳴を上げた。

強引に犬を蹴り剥がし、壁際に後退り。

その塀の上から、呻くように猫が鳴く。

両耳を削ぎ落とされた黒猫。

闇の中、光る眼が美弦を睨む…。

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