倫敦市の人々
その時だった。

美弦は見た。

『霧が動くのを』。

ただ漂うだけだった霧が収束し、空中で水滴となり、やがて水の弾丸となって獣達を撃つ!

雨垂れ岩をも穿つ、とは少々違うが。

水の弾丸を受けた獣達は血を流すでもなく、その場でヒラヒラと一枚の紙に姿を変えた。

「珍しい…『斬影式鬼』って奴かしら」

背後で声。

まだ怯えたままの美弦は過敏に反応して振り返り。

「『客と死者に楽しみを』…でも客でも死者でもない獣には、猛獣使いよろしく調教も必要ね」

先程のサーカスで見た曲芸師の少女の姿を見つけた。

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