倫敦市の人々
サーカスの公演で見ていた時も、魔法みたいな演出だと思っていたが、まさかフミが本当にこういった魔術めいた事に詳しいとは。

「どっちにしても、夜の一人歩きは控えた方がいいよ。倫敦市って何だか昼と夜で随分と印象が違うし」

「うん…」

それは美弦も感じていた事だ。

何もいないのに、訳もなく悪寒を感じる。

まるで暗がりに、何か良からぬものが潜んでいるのではないかと思わされるのだ。

「どこまで帰るの?何なら送ってってあげるよ」

ニパッと笑うフミ。

女の子に送られる男というのも如何なものか。

少々複雑な気分になる美弦である。

< 184 / 380 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop