倫敦市の人々
「戻らない」

コートニーは無慈悲に言い放った。

「寧ろあの化け物の姿がジャック本来の姿…貴方達が知っているジャックの方が仮初めの姿に過ぎない…」

「なっ…」

反論しようとするユヤ。

「だから撃った…」

コートニーの瞳に、冷徹なものが宿る。

「命令ではなく…化け物として生き続ける彼を不憫に思い…火葬機関の開発した記憶消去弾で彼を撃った…撃って…全ての記憶を奪った…」

そこにいるのは、身長の事でクヨクヨする弱気な娘ではない、任務の為ならば容易く引き金を引く冷酷な狙撃手だった。

「覚えていなくていい記憶もある…思い出さなくていい過去もある…」

それだけ告げて、コートニーはまた黙々と銃の手入れを続けた。

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