倫敦市の人々
「興味深い話だね」

また闇珠の背後で声がした。

「…吸血鬼ってこれだから油断できないのよねぇ」

肩越しに振り向く闇珠。

杖を携えたフロックコートの紳士が、モノクル越しに闇珠を見つめていた。

その瞳はあくまで冷ややか。

闇珠自身が何者であろうと関心はないといった視線だ。

関心があるのは『最愛』と、闇珠の語った話のみ。

「その仮説が当たっているとすれば、僕も『実験』の為のモルモットとして見られている可能性がある…」

気のせいか。

紳士…アイヴィーの奥歯が軋む音が聞こえたような気がした。

「些か不愉快な話だね…」

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