倫敦市の人々
そこへ。

「おっす」

学校帰りなのだろうか、制服姿の美弦がやって来た。

「美弦君いらっしゃい、ハーブティー飲みますか?」

笑顔で迎え入れる椎奈。

何かもう花屋なんだか喫茶店なんだか。

「うん、よろしく」

頷きながら、美弦は店の奥の椅子に座る。

「美弦、それ新聞か?」

美弦が小脇に抱えているのを見て、ユヤが言う。

倫敦タイムズ。

倫敦市の大手新聞社が発行している新聞だ。

「あ、そうそう。瑠架やコートニーに見せようと思ってさ」

美弦は新聞を広げる。

そこには、ある奇病が倫敦市で流行している事が報じられていた。

「『眠り続けて目覚めないヒュプノス病』?」

椎奈が記事の見出しを読み上げる。

ある日突然、原因不明の昏睡状態に陥る病であり、倫敦市に古くから居住している住人や、倫敦市の市政運営に携わっていた者、その関係者ばかりが発症する謎の奇病なのだそうだ。

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