倫敦市の人々
だがもし。

三つの勢力のどれかが、矛をおさめたら。

聖堂騎士団が、話し合いの場を設けようと持ちかけたら。

吸血鬼達が、人間の血に代わる新しい糧を探す努力をしたら。

闇珠達が、二つの勢力を仲裁しようとしたら。

この抗争劇は終わるかもしれない。

誰かが譲歩する事で、劇的に現状は変化するかもしれないのだ。

(ま…無理な相談だけどね…)

最早何が原因で、何が発端で、誰が元凶なのか。

そんな事がどうでもよくなってくるくらいに、この倫敦市の住人達は長く争いすぎた。

彼らは歩み寄れないし、もう親しき隣人にはなれない。

手を差し伸べるには、彼らは血を流しすぎたのだ。

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