倫敦市の人々
「お前は俺が何者か知ってるのか?」

闇珠に向かって訊ねるジャック。

「うん、知ってるよ。でも今はもう『只のジャック』みたいね」

「何?」

闇珠の返答に、ジャックは怪訝な表情を見せる。

「昨夜私達と争った時に、美麗がジャックの『何か』を食べちゃったみたいなの。最初は何を食べたのか分からなかったんだけど」

彼女は美麗の方をチラリと見る。

「食べたのは『記憶』だよ」

屈託のない笑みを浮かべながら美麗が言う。

化け物の時の記憶、倫敦橋の下でロンと暮らしていた時の記憶、ユヤや椎奈と出会った時の記憶。

これまでの過去の記憶という記憶を、美麗は全て食べてしまっていた。

記憶喪失ならば思い出す事もあるだろうが、食べられてしまったのならば、もう二度と記憶は戻らない。

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