倫敦市の人々
美弦の眼に映る、床に転がる自らの右腕。

まるで冗談のような光景を、彼は呆然と見つめていた。

切断された傷口から、滝のように零れ落ちる血。

刹那。

「う…あ゛ぁああぁっ…!」

美弦は傷を押さえてその場に崩れ落ちる。

あまりに重傷すぎて、痛みの感覚が麻痺したのか。

想像していたより苦痛はなかった。

そんな事よりも。

(あぁ…)

意外と冷静に、美弦は考える。

(やっぱり…やっぱり茨木童子の先祖返りなんだな…俺も…)

過去、片腕を失ってきた血縁と同じように、美弦もまた腕を失くした。

やはりこれは、彼の家系にかけられた呪いなのだ。

この呪縛からは、絶対に逃れる事はできないのだ…。

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