倫敦市の人々
蹲る美弦を前に。

「っっっ…!」

戦闘時の怒りと興奮で不自然なまでに無表情だった彩の顔が、見る見るうちに蒼白となる。

彼女は目の前にジャックがいるにもかかわらず、槍に変えていたヒヒイロカネとオリハルコンを解除。

瞬時に針金のような形に変化させ、美弦の傷口を強く縛って圧迫する。

止血帯の代わりだ。

「ごめっ…ごめんなさいっ…私…私、貴方を斬るつもりじゃ…!」

普段無口な彩の唇から出たのは、動揺し切った謝罪の言葉。

ガクガクと震え、己のしでかしてしまった行為に怯えている。

勿論、ジャックとの鍔迫り合いの最中に起きてしまった悲劇だ。

彩だけに責任がある訳ではないのだが。

< 318 / 380 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop