倫敦市の人々
結局備蓄していたパンと、あり合わせの野菜などを使ったシチューを作ってユヤ達に振る舞う椎奈。

自分は食べないとはいえ、料理の腕前はなかなかのものだった。

「美味いっ!椎奈の作るメシはいつ食っても美味いなあっ!」

がっつくユヤに、椎奈も両手で頬杖をついて嬉しそうだ。

「ところで…」

椎奈はその視線をジャックに向ける。

「ジャックさん、記憶喪失なんですよね…全く何も覚えていないんですか?」

「……」

スプーンを置き、ジャックは頷く。

「何一つとして記憶がない。名前も、年齢も、何故倫敦橋の下にいたのかさえも」

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