倫敦市の人々
理想郷
レイピアを引き抜く。

「うぐう!」

ジャックの呻き声と共に、噴き出す鮮血。

石畳に血溜まりが出来る。

「それでも死なないのかね…流石は畜生の血を引く者…無駄に生命力があるな」

「お前も…俺を知っているのか…?」

荒い呼吸のまま訊ねるジャックに。

「やれやれ」

その紳士、アイヴィー・クレメントは溜息をついた。

「記憶喪失というのは周囲の者にとっても難儀だね…何度僕に説明させるんだ、『最愛』以外に興味はないと」

< 361 / 380 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop