倫敦市の人々
片手に握っていたレイピアを構え、アイヴィーは両足を揃えて立つ。

「一度は大時鐘時計台から叩き落としてやったのだが…まぁ君は覚えていないだろうがね…今度はその程度では済まさないよ。何せ僕の手を煩わせるんだ。貴重な『最愛』との逢瀬の時間を奪った事、篤と後悔させてあげよう」

「……」

アイヴィーの軽口も、ジャックの耳には届かない。

高周波ブレードを握る手が、ミシミシと音を立てる。

自分でも分からない。

これは仲間を愚弄したアイヴィーに対する怒りなのか。

それとも吸血鬼を駆逐する為に誕生した対吸血鬼兵器としての本能なのか。

「お喋りは好みではないかね?結構」

アイヴィーは無言のままのジャックに切っ先を向けた。

「では始めようか」

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