倫敦市の人々
クルリと帝難川に背を向け、アイヴィーは歩き出す。

「さて…僕は『最愛』を迎えに行くとしよう…有象無象どもに追い回されて、可愛らしく仔猫のように細く鳴いているだろうからね…ああ、僕の愛しい『最愛』…今、迎えに行くよ」

一歩、歩を進める。

その瞬間。

「!」

帝難川から立ち昇る水柱!

空中に投げ上げられたのは、先程倫敦橋崩落と共に水中に没した筈の乗用車だった。

明らかにアイヴィーを狙って投擲されたと思われるそれを、彼は軽く跳躍して回避する。

「まさしく馬鹿力だな」

軽やかに着地しながら、アイヴィーはまだ宙に身のある男…ジャックを見上げた。

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