倫敦市の人々
しかしここで死ぬ運命なのは、どうやらアイヴィーでもジャックでもないようだった。

ズシン、と足元に伝わってくる震動。

剣を抜いたまま動きを止め、両者は大時鐘時計台の方角を見る。

時計台の高さ、96.3メートル。

その時計台の壁面に片手をかけ、ゆっくりと顔を覗かせる巨大な影があった。

闇珠のインプ達に群がられるのも意に介さず、その巨体をゆっくりと進めるのはホムンクルス。

倫敦市内の各所に出現しているものとは比較にならないくらいに巨大な、50メートル近い体躯のホムンクルスだった。

「何とも…よく育ったものだ」

その巨体を見ても尚、冷淡な表情で感想を述べるアイヴィー。

「確かあのホムンクルスとやらも、錬金術で生まれたのだったな…侮れんな、人間の狂気というものも」

「……」

ジャックはアイヴィーの言葉には耳を貸さない。

それどころか、アイヴィーを眼前にしながら向き直り、巨大ホムンクルスに相対する。

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