倫敦市の人々
そんな椎奈の主張は正しかったのか。

その日の昼下がり。

客足が一段落し、椎奈は店先の花の入れ替えをしていた。

と。

「ん?」

チャッ、チャッと石畳を蹴る爪先の音。

動物が爪のある足で地面を走ると、こういう音がするのを椎奈は知っていた。

振り向くと。

「あ」

そこには成犬のシェパード。

きちんとお座りの姿勢のまま、舌を出して、ヘッヘッヘッ、と嬉しそうに息をする。

千切れんばかりに振られている尻尾。

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