倫敦市の人々
「!!」

時計部屋に到達したジャックは、思わず息を呑む。

…誰かいる。

それは、思わぬ遭遇だった。

早朝、大時鐘時計台の最上階に人がいるとは。

常駐する時計台の技師か職人だろうか。

「…ほぅ?」

その人物は振り向きもせず、声を上げた。

「この時計台の時計部屋に来客とは…何を思ってこんな場所までやってきたのだね?」

コツ、と。

ダブルブレストで黒色のフロックコートとシャツ、ベスト、ズボン、ネクタイの一揃いを身に纏った男が、手にした杖で床を打つ。

「歯に衣着せず言えば…君らは招かざる客だ。僕は家畜を持て成す趣味はない」

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