倫敦市の人々

「何とも無礼だな…流石は家畜。初対面の際の礼儀を知らない…いや…」

モノクルの下の左目が、冷淡に細まる。

「家畜ではないか…家畜ではないが、家畜を守る番犬程度…畜生には変わりない」

「……」

ジャックの眼も同様に細まる。

時計部屋の端と端、交錯する視線…。

「君を何者か知っているか…と問いかけたね」

男は杖の柄を磨くように左手で撫でていく。

「答えはノーだ。過去に顔を合わせていたとしても、印象に残るほどの記憶がないのならば知らないに等しい…僕に顔を覚えさせるのは、先程君が告げたラミアという『同胞』と『最愛』のみ…だが…」