倫敦市の人々
アイヴィーやラミアは、ジャックの正体に近づける唯一の存在だ。

わかっている、わかっているとも。

彼らが吸血鬼だろうと何であろうと、今は乞う立場。

そんな事は百も承知。

だが。

「下手に出るのももう厭きた…」

「……!」

その瞬間、あろう事かアイヴィーの肌に粟立つものがあった。

目の前の男から発せられる、剥き出しの獣性。

あからさまな威嚇が、アイヴィーに向けて放たれる。

「驚きだ」

フロックコートの紳士は呟く。

「僕を戦慄させる者がいるのか」

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