倫敦市の人々
腰に帯びた刀。

それに手をかける。

その時になって初めて気付いた。

刀を抜くという行為に馴染んだ己の右手。

呼吸をする事が自然であるように、慣れた動作で抜刀した。

幾度となく繰り返した動きであるように。

過去の自分は、こうして何度も刃を抜いたのか。

そしてこんな物騒なものを抜いた以上は、幾度となくこの刃に血を吸わせてきたのかもしれない。

ならば、ジャックもまた吸血鬼と大差ないのではないか。

< 86 / 380 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop