倫敦市の人々
これを。

「!」

弾いた。

下段からの斬り上げ。

レイピアの刺突の軌道を強引に変えられ、アイヴィーは即座に床を蹴ってボンナリエール(後方への跳躍)で間合いをとる。

まさか、見えた訳ではあるまい。

家畜や番犬程度に見切られるほど、吸血鬼の動きは緩慢ではない。

些か嘗めてかかっていたとしてもだ。

ならばどうやってフレッシュを弾いた?

回避ならば当てずっぽうも有り得るだろうが、受け太刀となれば、まぐれの要素は限りなく低くなる。

「獣ゆえの本能か?」

「さぁな…」

呼吸を乱しながら顔を上げるジャック。

その表情が、牙を剥いた肉食獣を彷彿とさせた。

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