倫敦市の人々
寝た子を起こしたか。

少々戯れが過ぎたとアイヴィーは考える。

これしきで窮地に立たされるという事もないが、ケダモノとじゃれる趣味もない。

「獣臭をコートに染み付けては、『最愛』を抱き締められない」

「女の心配か、余裕だな…」

ユラリと刀を八双に構え直すジャック。

全身のバネを活かし、前傾姿勢で食らいかかろうとする狼の姿がダブって見える。

「何者なのだろうね、君は。退屈な長い人生の余興、謎解きも悪くはないが」

スゥッと。

アイヴィーのレイピアの切っ先がジャックに向けられる。

「ここらで幕引きだ」

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