いとしいこどもたちに祝福を【後編】
受話器を置いた青年の袖口を軽く引いて、少女は首を傾げる。

「今の、誰だった?」

「前に話した、先輩の奥さんだよ。娘さんが君の三つ下でね、赤ちゃんの頃から良く知ってる子なんだ」

「そっか…」

「どうしたの夕、焼きもち?」

「っ違うから!ただ…やっぱり慶が見付かったって連絡じゃなかったんだと思って」

寂しげに俯いた少女の頭を、青年は優しく撫でた。

「うん…もしそうだったら僕は一人にならずに済んだのにね」

「…ごめん……でも、もう能無しの役人に頼ってても埒があかないもの」

「先輩の娘さんとも、きっと仲良くなれそうなのに」

「慶の一つ下かあ…いいね、そのくらいの妹がいたら良かったのに。可愛げない野郎二人より、楽しそう」

くすりと笑う少女に青年が「僕は十分楽しいよ」と苦笑する。

「うん…だから必ず、私と賢とで慶を見付けて帰ってくる。その娘さんにも、三人揃って挨拶出来るようにさ」

「…道中、気を付けて。君は特に喧嘩っ早いから」

「大丈夫。賢が一緒だもの」

「いや…相手をあんまり怪我させないようにね?」

「あ、そっちか」

時と場合によっては保証出来ないなあと呟く少女を、青年はやんわりと抱き締めた。
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