いとしいこどもたちに祝福を【後編】
「ううん……でも、いいの。あんまりおなか、空いてないから」

予想通り。

「姉ちゃん…そんなだからいつまでも細っこいままなんだぜ?」

少しわざとらしい呆れ口調で話して見せると、晴海は少し拗ねたように頬を膨らませた。

「風弓だって、似たようなものじゃない」

「俺は着痩せしてんだ。実は脱ぐとすげえんだぞ」

「なに、それ」

まあ、残念ながら嘘だけど。

晴海がくすくすと笑い声を上げて顔を綻ばせたので、良しとしよう。

姉が笑っていると、自分も嬉しくなる。

「――…ねえ、ふゆちゃん」

ふと何気なく子供の頃の渾名で呼ばれ、気恥ずかしさで一気に頬が紅潮した。

「…!!ちょっ…何で今更その呼び方…」

思わず抗議の声を上げると、晴海ははっとしたように口元を押さえた。

「ごめん。風弓、ちゃん付けされるの嫌いだったよね」

――そう。

ただでさえ名前が女みたいだから、人前でそう呼ばれるのが恥ずかしかった。

けれど、晴海にそう呼ばれること自体が嫌いな訳ではない。
< 147 / 331 >

この作品をシェア

pagetop