いとしいこどもたちに祝福を【後編】
魔力の反応――大地を揺るがす程の強い魔法を、誰かが行使したということか。

「…結界の外から、干渉があった可能性は?」

「いえ、今のところその可能性はないようですが詳細は不明でして、何とも…旦那様もすぐ数名を病院へ向かわせました」

陸の胸中を推察するように、目の前の男性はそう言って表情を曇らせた。

「…陸様、才臥様方の安否が気掛かりなのでしょう?」

「でも、俺は…」

病院のことは様子を見に向かった者たちに任せて、自分は此処を離れるべきではない――そうすべきなのは解っている。

だが、これ程の揺れを引き起こせる能力者は、病院内であれば風弓くらいしか考えられない。

となると、晴海の身に何かあったのだろうか。

まさか月虹から、香也や誰か他の使者がまた現れたのでは――

「…陸様が春雷のためを想われて行動されていることは、旦那様は大変嬉しく思われています。しかし旦那様は、陸様が一番大切だとお考えのもののために動いて欲しいと、そう伝えるよう私に仰いました」

「俺の一番、大切なもの…」

「陸様、何処へ行かれますの?」

思わず立ち上がった瞬間、令嬢の一人が透かさず声を上げた。

「っ…」

「まだわたくしとは、お話をして頂けておりませんわ…」

「わたくしもですわ」

一人がそう言うと、何人かの令嬢たちも口々にそう言い始めた。
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