いとしいこどもたちに祝福を【後編】
確かに、声を上げたのは話をする順番が後になっていた令嬢だ。

彼女たちを置いて自分がこの場を離れれば、結局は見合いの話を受けずに投げ出したと見なされても反論は出来ない。

「…時間を取れなかった方々には申し訳ないけれど」

だが、それでも――

「俺の大切な命の恩人が、危ないかも知れないんだ。俺…その人を助けに行かなきゃ」

唖然とする令嬢たちを尻目に陸は傍らの青年へ目配せすると、相手も小さく頷いた。

「邸のことは我々、配下の者共にお任せください。陸様は病院へお急ぎを」

「…うん、有難う」

陸は令嬢たちに一礼すると、見合いの席に使っていた広間を飛び出した。

――そして、急いで邸の外へと出た瞬間、異様な気配が辺りを漂っていることに気が付く。

大気中に、異常と言える程に膨大な量の魔力と霊力が溢れ返っているのだ。

魔力に含まれる属性も普段春雷に満ちている風の気配だけではなく、焔や水や地など、様々な属性が入り交じっている。

余りにも無秩序で膨大な魔力の気配には、宛(さなが)ら魔力酔いを起こしてしまいそうだ。

「何だよ、これ…」

転移魔法を試みたが、この飽和状態にある魔力の影響か上手く照準が合わせられない。

「くそっ…!!」

陸は忌々しげに小さく舌打ちをすると、病院の方角へと走り出した。


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