いとしいこどもたちに祝福を【後編】
不意に背後から声を掛けられ、風弓は勢い良く振り返った。

「っ香也…!?」

「其処ら中に溢れ出した力のお陰で、邪魔な結界が弛んだみたいなんでな。簡単に入って来れたぞ」

何故また此処に、と問うより早く香也はそう言いながらくすくすと笑った。

「何の、用だ…!それに無駄、って…」

「こうなると、晴海は自分自身にも力の制御が出来ない…無尽蔵に持ちうる力を放出して、暴走するだけだ。いくら周りが呼び掛けても、何の意味もない」

何故、香也がこれ程までに詳しいことを把握しているのか――今の風弓には、そんなことはどうでも良かった。

それよりも晴海を止めなくては。

「そんな、の……っ姉ちゃんの身体が保たない…!姉ちゃんの身体は、あの力が掛ける負担に耐え切れないんだ!止め、ないと…姉ちゃんが死んでしまうっ…!!」

そのために、封じていたのに。

思い出さないように、忘れさせていたのに。

「晴海の能力は、膨大な魔力と霊力の塊だ。お前程度の能力じゃ、到底抑え切れない」

「解ってる!そんなの解ってるっ…でも…!」

苦しんでいる晴海の姿を、ただ黙って見ていることしか出来ないのか。

どうして、自分には、何も――

「そうだ、香也…!っお前くらい強い能力者だったら…!!」

「それも無理だな。俺がしてやれるのは、魔力の制御だけだ。霊力の扱いは俺も不得手でな」

今まで飄々としていた香也が、不意に苛立ったように唇を噛み締めた。
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