いとしいこどもたちに祝福を【後編】
そして、空気中を無造作に漂っていた魔力と霊力の流れが止まったかと思うと、二人の力がそれらを抑え込むように一気に強まった。

晴海の力は風弓にも解る程、急速に小さくなってゆく。

するとそれに呼応するかのように、晴海は蹲(うずくま)って苦しげな悲鳴を上げた。

「ぁあぁ…っ!やぁっ、ぁ、あああっ…!!」

「っ姉ちゃん!!」

力を抑え込まれるのが苦しいのか、懸念していた心臓の病が再発してしまったのか、見守ることしか出来ない身としては気が気ではない。

「晴っ…」

その悲鳴に怯んだのか、陸がふと一瞬躊躇(ためら)うように表情を歪ませると同時に、霊力がほんの僅かに弱まる。

「陸!本気でやれ、こっちが弾き返されるぞ!!」

しかしそれに気付いた香也が声を上げるとほぼ同時に、陸はすぐ持ち直した。

「わかってるっ…!晴…っ頼む、落ち着いてくれ…!!」

陸と香也の両手が纏う光から、ばちばちと力の鬩(せめ)ぎ合う音が弾ける。

しかし大分弱まったとはいえ二人が渾身の力を込めても尚、晴海の力の暴走はなかなか鎮まろうとしない。

――それから暫く互いの力の圧し合いが続いて、漸く晴海の力は収束を見せた。

最後に、ばちんと大きく空気の弾けたような音が響くと共に、気分が悪くなるほど重苦しかった空気が一気に軽くなる。

「っは…」

その瞬間、陸と香也は緊張の糸が切れたように揃って膝を着いた。

「陸、香也…!」
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