いとしいこどもたちに祝福を【後編】
いつも自分より他者を気遣う晴海のことだ、賢夜のことも自分が悪いと思って気に病んでしまっていないだろうか。

晴海は、心配げな表情を浮かべながらゆっくりとこちらの傍に歩み寄る。

「…なかなか来れなくってごめんね。疲れてるみたいだけどごはん、ちゃんと食べてる…?」

「う、うん」

余計な心配をさせまいと反射的にそう答えたが、実際はここ二日間程は碌に何も口にしていない。

そう、と小さく頷いた晴海は何か後ろ手に荷物を提げているようだった。

「今日は、まだお昼食べてないけど…晴海は?」

「あ…あのね?私、お弁当作ってきたんだ。お邸の台所って広くてちょっと慣れなかったけど、…良かったら、食べて」

するとそう言って晴海は、手に提げていた包みを夕夏に差し出した。

「あ、りがと」

「そんなに料理上手じゃないから、もしかしたら口に合わないかも知れないけど」

「そんなことないよ。暁が前に君んちで夕飯ご馳走になったときの話聞いたけど、君の料理のこと絶賛してたもの」

暁は独身生活が長いため自炊もそこそこ出来るし、元々物事に対する評価は厳しめで不必要に人を誉めない。

そんな暁が唯一手放しに尊敬する先輩の、娘であってもそれは例外ではないため、お世辞ではないことは確かだ。

「本当?」

晴海もそれを知っているのか嬉しそうに笑みを浮かべたが、少し寂しそうにも見えた。

そうだ、晴海だって今回の襲撃で色々大変だった筈だ。

事の顛末は、病院の待合室で賢夜の処置が終わるのを待っている間、晴海から端的に聞いただけだったが――
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