いとしいこどもたちに祝福を【後編】
「父さんは本来、俺からもあの日の記憶を忘れさせるつもりだったんだよ。でも俺、あのときに晴と約束したから…」

「え?」

「約束?」

「どんな?」

三人から一斉に詰め寄られ、思わず後退りする。

「っ十年経って、大人になったら俺が晴に逢いに行くって、約束……」

「「「ふ~ん…?」」」

京と夕夏は興味津々といった雰囲気だが、風弓からは何やら殺気を感じる気がする。

実はその際、結構強引に求婚までしていたなんて、この雰囲気の中では到底言い出せなかった。

結局、自分が月虹に連れ去られたためにその約束は果たせなかった訳だが。

「…じゃあ、君はちゃんと晴海に逢いに炎夏まで来たんだね」

「……へ?」

面食らって夕夏を見返すと、相手は愉しげに口元を押さえた。

「だって、炎夏で逢ったのが結果的に十年振りの再会だったって訳でしょ?君は記憶を失ってても、約束を守ってたんじゃないか」

「…!」

言われてみれば、そうか。

だからこそ自分は月虹を脱出するとき、必死で晴海に逢いに行こうとしていたのかも知れない。

それに、充も約束のことを覚えていてくれたのだろうか。
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