いとしいこどもたちに祝福を【後編】
「父さんと話してくる。あの力を抑えてたのは父さんだし、それに訊きたいこともあって」

「…香也が言ってたことか?」

香也は姿を消す前に、謎掛けのようなことを言い残していった――陸はそれが気掛かりなのだろう。

「その香也が晴海に近付いたとき何か細工したとか、考えられない?」

夕夏の言葉に、陸が真っ先に首を振った。

「…いいや、あの状況では流石にあいつも他のことを考えたり細工する余裕なんてなかったと思う。俺も香也も、晴の力を鎮めるので手一杯だった」

「…それにあいつ、姉ちゃんを危険な目に遭わせる気はないんじゃないかな」

「でも香也は春雷を襲ったとき、陸を誘き寄せるために晴海を人質にしてるんだよ?」

「それは…そうなんだけど」

確かに、香也の行動の意図は解らない。

しかし香也は嫌っている筈の陸と協力までして、晴海のことを全力で助けてくれた――

「みんな、いるか?」

不意に扉を叩く音と向こう側から掛けられた声に、陸が弾かれたように顔を上げる。

開かれた扉の向こうには周と、初めて見掛ける銀髪の小柄な女性が寄り添っていた。

「父さん、母さん」

(!そうか。あの人が、陸の母親の愛梨さん…)

その桜色の眼と目が合った瞬間、ふわりと柔らかな笑顔を向けられ思わず狼狽する。

あの架々見が彼女に固執している気持ちが、不本意ながらもほんの少しだけ解ってしまった気がした。
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