いとしいこどもたちに祝福を【後編】
「っ父さん…!?」

「あなたっ!!」

陸と愛梨と京が、一斉に周の傍に詰め寄る。

「父さん…!父さんっ!!」

いくら必死で呼び掛けても、全く反応がない。

周は完全に意識を失っていた。

「っ陸、母さんを頼む…!」

京は素早く立ち上がると、何処かへ走り出した。

恐らく、誰か人を呼びに行ったのだろう。

「あなた…眼を、あけてっ…!」

どうしよう、父のこんな弱った姿を見るなんて、初めてだ。

どうしよう、やっぱりさっき無理にでも休んで貰えば良かった。

どうしよう、母が父を呼ぶ叫び声が頭に響いて胸が張り裂けそうだ。

兄に母のことを頼まれたのに、どうすればいいのか、手が震えて思考がまとまらない。

「陸」

(…え?)

「落ち着いて、周さんは大丈夫だよ」

すぐ傍で、穏やかにそう囁く声が聞こえた。
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