いとしいこどもたちに祝福を【後編】
「…晴?」

「りっくん、どうしたの?」

傍らの晴海に声を掛ければ、返ってきたのは幼さを含む声色。

今のは気のせい、なのか。

「いや…なんでも、ない」

陸は愛梨の手を握ると、自分にも言い聞かせるように声を掛けた。

「大丈夫だ…すぐ兄さんが戻ってくるから安心して、母さん」

それでも、愛梨の手の震えは一向に治まらない。

「――陸、一体どうしたの?」

其処に、病院から一旦戻ってきた夕夏と天地が駆け寄ってきた。

「父さんが急に倒れたんだ…っ!最近仕事が忙しくて…呼んでも全然、反応がなくて」

「!暁」

「うん、ちょっと失礼」

夕夏の声に天地は頷くと、周の傍らに素早く座り込んだ。

「陸、この方は…」

「夕夏の家族で、天地先生だよ。お医者様なんだ」

「お医者、様…」

その言葉に愛梨は幾分安堵したようだった。
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