いとしいこどもたちに祝福を【後編】
「だから俺はせめて、姉ちゃんを守る壁になりたかった。能力や病気は肩代わり出来ないけど、姉ちゃんを取り巻く外側の危険から守るんだって」

結局その役割については、自分ではなく陸や香也に授けられていたものだと知り多少悔しくもあるが。

「姉ちゃんが月虹なんかに連れて行かれなくて良かった。……それだけでも十分なのに、父ちゃんや母ちゃんからこんだけ大事にされちゃあ、俺は幸せ過ぎて困っちまうくらいだ」

「おーおー、精々困れ困れ」

先程まで珍しくしおらしげに見えた母の表情は、いつの間にかいつも通りの明るい面持ちに戻っていた。

――それに、もしかしたら晴海の病気もその身を守るために必要なことだったのかも知れないと、今は思う。

もし晴海が健康なまま生まれていたら、冬霞の領主が言うように、月虹やそれ以外の悪意を持った組織に晴海の能力はすぐ露見し狙われていた筈だ。

陸や霊奈家との奇縁も、晴海の病気を抑えるために父が試行錯誤しなければ生まれなかったのだから。

「…それよりも俺は、何で俺にこんな女みたいな名前つけたのか訊きたいよ」

「ああ、言ってなかったっけ?」

「?」

愉快げに笑う仄に、風弓は首を傾げた。

「あんたたちの名前は、あたしの親父がつけたんだよ」

「才臥の爺ちゃん?」

もう逢えなくなって数年経った祖父のことを思い出す。

母そっくりで豪胆な気質の彼は秋雨に残ったと聞いているが、元気でやっているだろうか。

「双子だから揃いの名前がいいなってことでね。あんたたちが生まれた日はちょうど冬みたいな春みたいな、少し寒くてあったかい日だったから」

「へえ…」
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