いとしいこどもたちに祝福を【後編】
「りっくん…わたしのこと、きらい?」

「嫌いじゃない。初めて逢ったときからずっと…八つのとき、君と出逢った頃からずっと、好きだ」

嫌いな訳がないじゃないか、と必死で伝えるように、陸は大きくかぶりを振った。

「りっくん、わたしのこと、じゃま?」

「邪魔じゃない。ずっと、傍にいて欲しい。俺もずっと、晴の傍にいたいよ」

「でも、わたし……ずっとこのままじゃいけないんでしょう?」

「どうして?」

「だって……わたし、ほんとはまえからりっくんのことしってるんでしょ?」

「!それは…」

記憶を失っていることを、自覚していたのか。

晴海を気遣ってと今まで避けていた話題に触れられ、思わず言葉に詰まる。

「りっくんだけじゃなくて……ゆうかちゃんやりっくんのおにいちゃんのことも、わすれちゃったんでしょ…?」

「晴」

晴海は、あまり沢山話をするのに不慣れな様子で、辿々しく言葉を続けた。

「……どうしてわすれちゃったのか、ずっとかんがえてたけど…やっぱりわからない。でも……さっき、りっくんのことをかんがえてたら…むねがいたくなったの」

「俺のこと?」

「うん…」

晴海は俯いて小さく首を振ると、意を決したように陸の眼を見つめた。
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