いとしいこどもたちに祝福を【後編】
「……りっくん、だれかとけっこんするの?」

やはり先程の会話の内容を、断片的に聴かれてしまっていたようだ。

何処から聴いていたのかは解らないが、勘違いをさせてしまったことにまた罪悪感が生まれた。

それも全部、自分のその場凌ぎの浅慮のせいだ。

「しないよ。でも…晴とだったら、したい」

「わたし、と…?」

晴海が驚いたような、困惑したような声を上げたので、陸は思わず晴海を抱き竦めていた腕を少し緩めた。

それでも晴海は逃げず、じっとこちらを見上げている。

「晴は、どう?俺のお嫁さんに、なってくれる?」

「…まだ、よくわかんない」

「そっか…」

聞き覚えのある回答に苦笑しながら、陸は晴海の髪を撫でた。

「いいよ。もう少し大人になったときに、もし良かったら考えてみて?」

「おとな…りっくんはもう、おとななの?」

「どうかな。まだまだ、子供かも」

「じゃあ、わたしといっしょ?」

「一緒だよ」

それを聞き届けると、晴海は少し安堵したように陸の胸元に縋り付いた。
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