いとしいこどもたちに祝福を【後編】
「君たち双子を引き合いにしたら、才臥はすんなり協力的になってくれただけだよ」

「引き、合い…?」

「私にとって双子の能力者は実に興味深い研究対象だったのでね…協力しないのなら双子を代わりに連れて行くと提案したんだ。そうしたら才臥は息子を一緒に連れて行くから、娘には手出しするなと言ってきた」

「…!!」

思わずびくりと身動ぎすると、風弓の手に手を強く引かれた。

「妙に庇うものだから、てっきり風弓よりも君のほうがより優れた能力者なのかと思っていたんだが…当てが外れたようだな」

すると京が二人を隠すように目の前に立ち、苛立ちを露に如月を睨み付けた。

「…お前が救いようのない下劣な人間だってことが良く解ったよ。これ以上僕の機嫌を損ねないうちに、その減らず口を閉じて貰えないか」

「これは失礼を、育ちのよろしいご子息様の前でするような話ではありませんでしたねえ。しかし…こんなところへいらっしゃるだなんて、お父君がご心配なさるのでは?」

「僕は弟を取り戻しに来ただけだ。陸を返して貰えればすぐにでもお暇するよ」

「弟君?さて、私には何のことやら…」

「惚(とぼ)けるな…!弟だけじゃない、此処には各国から攫ってきた能力者の子供が他にもいる筈だ」

「此処にいるのは皆、私に従順な可愛い研究材料たちばかりですよ。あの方のお役に立つための、ね」

(あの方?薄暮の、領主のこと…?)

「研究材料、だと?」

ぞくりとするような京の低い声色をものともせず、くすりと笑みを零して如月は続けた。

「成程、ご子息様は我々の研究に興味がお有りらしい。なら特別にお見せ致しますか。だが…此処は少々狭すぎるので場所を変えさせましょう」

如月がそう言ってぱちんと指を鳴らすと、途端に周囲が光に包まれ景色が入れ替わってゆく。
< 38 / 331 >

この作品をシェア

pagetop