いとしいこどもたちに祝福を【後編】
「大丈夫だよ。陸のことはもう、十分晴海ちゃんが叱ってくれたからね」

「…!あれはえっと、あの…」

ふと何気なく名前を挙げられて、どきりとする。

あのときは、つい勢いに任せて思わず身体が動いてしまったというか何というか。

「うん、あれは本当にかなり効いた…色んな意味で」

「姉ちゃんは普段滅多に怒らない分、怒らせると結構恐いんだぜ」

「まあ、僕もちょっと意外だったから驚いたかな」

(ああああ、どうしよう、物凄く恥ずかしい)

冷静に立ち戻ってから自分の言動を思い返すと、非常に居た堪れない。

「ごっ…ごめんね陸、痛かったよね」

「俺なら平気だよ。それに、ああしてくれなかったら情けないけど正気に戻れなかった、だろうし…晴の手のほうが痛かったんじゃないか?」

陸はこちらに歩み寄ると目の前で膝を折って、晴海の右の掌を両手でやんわり包んだ。

「ごめん…それに、有難う」

「私、こそっ…あのとき独りで月虹に行かせてしまって、ごめんなさい……でも…風弓を守ってくれて、ありがとう」

すると陸は寂しげに微笑んで、小さく首を振った。

「本当は…充さんも助けたかったんだ。二人を晴と仄さんのところに連れて行きたかった」

「…ありがとう、陸」

今となっては叶わないことだが、陸がそう思ってくれていただけで嬉しい。
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