いとしいこどもたちに祝福を【後編】
「――ちょっと待って。その才臥さんのことなんだけど」

「!」

ふと割って入った声に、晴海は弾かれたように顔を上げた。

「兄さん…?」

「陸、風弓くん。二人は実際に亡くなった彼の姿を見ているのかい?」

唐突な京の言葉に眼を瞬きながら、陸と風弓は顔を見合わせる。

「京さんっ…急に何を――」

当惑して声を上げると、それを制するように風弓の手が肩に置かれた。

「…俺は、親父が月虹を裏切ったから処罰のために殺されたって如月から突然聞かされて……死体、も見たよ。硝子の壁越しに、だったけど」

(…!!)

「そのとき何か不自然な点とか、気が付いたことはなかったかい?」

「いや…何だか、余りにも唐突すぎて、訳が解らなかった。頭ん中ぐちゃぐちゃになって、真っ白になっちまって…良く覚えてないんだ」

淡々と問い掛ける京に、風弓は少し不安げな口振りで答える。

きつく握り締められた拳に触れると、びくりと震えたその手は妙に冷たかった。

「そうか…陸は?」

「俺は…炎夏で風弓からそのことを聞いただけだよ。俺が月虹に戻ったときは、充さんのことは殆ど聞けなかった」

「風弓くんと違って、才臥さんには対面してないのか」

「…死体は俺が炎夏へ向かう直前に、私物と纏めて処分したって聞かされたよ。肉親の俺には何の断りもないまま、な」
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