いとしいこどもたちに祝福を【後編】
「!…うん」

陸は意を決したように悠梨に頷いて見せると、不意に晴海の手を両手で掴んだ。

「晴、俺…行ってくる。母さんにもちゃんと、ただいまって言わなきゃ」

「…ん。そうだね」

まだ少し浮かない表情のまま陸を見つめると、陸の心配げな双眸と目がかち合った。

「ごめんな。今度きちんと、母さんにも晴のこと紹介するから」

そう言ってから陸は一旦言葉を切ると、ふとこちらへ身を乗り出した。

「…?りく――」

何をするのかとこちらが問うより早く、頬に陸の唇が触れる。

「俺の、大切な女の子なんだよって」

そして耳元にそう囁かれた瞬間、自分の顔が一気に真っ赤になったのが鏡を見なくとも判った。

「「なっ…なに言ってっ…!!」」

思わず上げた声が、風弓のそれと間の取り方から声の調子までもが見事に重なった。

「おお、流石双子…」

脇で誰かがぼそりとそう呟いた、ような。

だが今はそれどころではなかった。

「り、りりりりっ陸、たいせつ、って…っそれに、いまほっぺたに、あ、あああああのっ」

「?」
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