いとしいこどもたちに祝福を【後編】
「なのにっ…今度は愛梨様に貴方様を奪われた…!愛梨様は都様のような、身分ある令嬢でも何でもない、私と同じ孤児だったのに…私のほうがずっと前から、周様のことをお慕いしていたのにっ!!」

「…父さんが何故お前じゃなく母さんを選んだか、お前にはいくら考えても解らないよ」

京は憐憫の表情を浮かべて、小さく吐き捨てた。

「…だから、愛梨様を手に入れたがってる薄暮の領主に協力したのよ!愛梨様がいなくなれば、周様は今度こそ私に振り向いてくれるかも知れない…!!だから私はっ」

「お前はそうやって、父の信頼を裏切ったんだな…父さんはお前を信じてたのに」

「…周様!!」

美月は、縋るような眼を周に向けた。

「美月…」

――薄々、自分に対する美月の気持ちには感付いていた。

しかしその想いから変じた憎しみが、こんな形で息子たちに及ぶとは思いもしなかった。

「…お前の気持ちに、応えてやれなくてごめん。だけど俺はその代わりに、仕事で一番に信頼していたのはお前だったんだよ」

「!周様…」

その想いには触れない代わりに、そうすることで美月は理解してくれるだろうと思っていた。

「…お前が引き取られたとき、俺は妹が出来たと思って嬉しかったんだ。俺には兄弟がいないから」

美月も、同じように思ってくれているのだと。

「お前の想いを受け入れなかった俺が、憎いか。だから俺の大切なものを壊そうと、するのか」

哀しげに問うと、美月は必死に首を振った。

「ち、が…っ私はただっ……」
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