いとしいこどもたちに祝福を【後編】
京は少し困ったように笑うと、「解ってるよ」と呟いて俯いた。

「陸。お前は、俺と愛梨と京の血を家族として繋ぎ合わせてくれたんだ。お前が生まれてきてくれて本当に、良かった」

すると陸は、嬉しそうに頷いた。

「美月。俺が自分の意思で選んだ相手は、後にも先にも愛梨一人だけだ。もしも架々見に愛梨を奪われたら、俺は全力を尽くして愛梨を取り戻すよ。本当なら陸のことも、そうしてやりたかった」

周は掌に血が滲む程に、強く拳を握り締めた。

「これ以上、俺の大切な家族に何かするつもりなら…たとえお前でも容赦しない。俺にとって愛梨と京と陸の存在は、誰にも代わりは出来ないんだ」

言葉にして伝えなくとも理解してくれる、そう思い込んでいたのは傲慢だったのか。

せめて、もっと早くに気付いていれば良かった。

「…ごめんな」

憂いを含んだ眼差しで小さく謝罪すると、美月は眼を見開いてふらりと後方によろめいた。

「ふっ…ふふ…あはははっ!馬鹿みたい……最初から解ってたのにっ…周様が、私のことなんて見てないことくらい、貴方が愛梨様のことしか見てないことくらい……!!」

美月は俯いたままふらふらと後退りした。

周は一定の距離を保ちながら、少しずつ美月に歩み寄る。

「美月、お前は架々見に利用されただけだ。だから…」

「だから?」

こちらの言葉を遮って、美月が勢い良く顔を上げた。

「…だから私に情けを掛けるおつもりですの?そんなだから貴方はお人好し過ぎるんですわ!それに、後ろにいらっしゃるお二人が私を許すとでも?」

美月の恨めしげな視線を受け止めても、陸と京は黙ったままじっと動かなかった。
< 91 / 331 >

この作品をシェア

pagetop