いとしいこどもたちに祝福を【後編】
すると陸は、少し照れ臭そうに愛梨の言葉を咎めた。

「ふふ、陸は本当に晴海ちゃんのことが大切なのね」

愛梨はくすくすと笑いながら、陸を優しい眼差しで見つめた。

「私はもう、晴海ちゃんお礼を言うことが出来たから…後はもう一度、きちんと自分の気持ちを伝えなさいね」

その言葉に、陸はばつが悪そうに肩を竦めた。

「…陸?」

「この子ったら、まだ貴女にきちんと言ってないことがあるでしょう?恥ずかしがって、みんなの前でごまかしたりしたみたいだけれど…」

みんなの前――?

「…いいよ母さん、ちゃんと自分で言うよ」

「あらあら。それじゃあ晴海ちゃん、時間を取らせて貰って有難うね。また時間が出来たら、一緒にお話してくれる?うちには女の子がいないから嬉しくって」

再び愛梨に両手を握られたので、晴海はそれに堪えるように手を握り返した。

「は、はいっ…私なんかで良ければ、いつだって…!それに私こそ、有難うございました。陸のお母様にお逢い出来て、本当に嬉しかったです」

「ええ…困ったことがあったら、陸や私に何でも言って頂戴ね――」



「へえ。そんなことがねぇ…何だかいつの間にか色々と話が進んでるんだなあ」

一頻り話し終えると、夕夏は椅子の背凭れに身を預けて腕を伸ばした。

「ご、ごめんね夕夏…事後報告ばっかりになっちゃって」

「え?ああ、いやいや月虹行きの話?仕方ないよ、多分私が一緒に行ってもそれこそ足手纏いだったろうし」
< 97 / 331 >

この作品をシェア

pagetop